「大学職員の求人に応募したいけど、志望動機は正直に『働きやすそうだから』と書いていいの?」
「大学職員の志望動機の書き方のコツやNG例を知りたい!」
「大学職員の志望動機を考えるときは、どんな資料を参考にしたらいいの?」
大学職員の求人に応募しようとしている人の中には、このような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
確かに、大学職員の安定性や働きやすさに魅力を感じて応募を決めたのはいいものの、いざ志望動機を書くとなるとそれらを正直に書いてよいのか、悩んでしまいますよね。
また、特に母校の大学へ応募するのではない場合、その大学の特徴や強みを知るために、どのような媒体でネタ探しをすればよいのか、迷ってしまいますよね。
結論から言うと、大学職員の志望動機は、以下の3つのポイントを抑えつつ、3つのNG例を避ければ、ある程度正直に書いてもOKです。
- PREP法(結論・理由・具体例・再結論)を意識しよう
- 志望動機に自分の経験や得意なことを結びつけよう
- その大学でなければいけない理由を言えるようにしよう
- 限られた業務だけを志望している
- 安定やワークライフバランスだけが志望理由
- 地元志向が強すぎる(私立大学の場合)
具体的には、以下のような志望動機を軸にして考えると、書きやすいです。
- 地域貢献・地元志向
- 教育・研究への興味
- 建学の理念への共感
理由としては、「地域貢献・地元志向」や「教育・研究への興味」は大学職員の志望動機としてポピュラーであるため面接でも共感を得やすく、「建学の理念への共感」は、大学の方向性とあなたの考え方とがマッチしていることをアピールしやすいからです。
そして、志望大学の特徴や強みを知るためには、以下のような媒体を参考にしましょう。
- 受験生向けパンフレット
- 経済系雑誌の大学特集号
- 国立大学の統合報告書
- 各大学の中長期計画
- 大学認証評価
- 大学職員の志望動機の例文を【①地域貢献②教育研究への興味③建学の理念への共感】の3つのパターン別に解説
- 大学職員の志望動機を説得力のあるものにする3つのポイント
- 大学職員の志望動機でよくあるNG例3選を解説
- 大学職員2000人の調査結果から、リアルな志望理由を分析
- 志望大学の特徴や強みを知るための5つの媒体を紹介
この記事は、元・国立大学職員で、転職活動では私立大学の内定も獲得したことのある筆者が、大学職員の志望動機について、具体的な書き方のコツや例文、ネタ集めの方法に至るまで、徹底的に解説します。
この記事を最後まで読んでいただくことで、大学職員の志望動機の書き方が理解でき、内定にグッと近づくことができます。
大学職員の志望動機が書けなくて迷っている人は、ぜひ最後までじっくりと読んでみてくださいね。
1.大学職員の志望動機の書き方を解説!3つのパターンの例文を紹介
まずは、志望動機の書き方を、例文をもとに解説していきます。
大学職員の正直な志望動機としては、「安定しているから」「仕事が楽そうだから」「ワークライフバランスが良さそうだから」などでしょうか。
もちろん純粋に大学職員という仕事にやりがいを見出している人もいるでしょうが、多くの人は大学職員の安定性やデスクワークである点に魅力を感じていることと思います。
「4.大学職員2000人のリアルな志望理由を分析して国立・公立・私立それぞれの特徴を理解しよう」でも解説しますが、実際に、ほとんどの大学職員が仕事を選んだ理由として「安定しているから」があてはまると答えています。
しかし、当たり前ですが「安定しているから大学職員になりたいです」という志望動機だけでは、内定を勝ち取ることはできません。
そこで、以下の3つのパターン別に大学職員の志望動機の例文を考えましたので、ぜひ参考にしてみてください。
- 地域貢献・地元志向
- 教育・研究への興味
- 建学の理念への共感
それぞれの志望動機のポイントと、面接で予想される質問についてもあわせて解説していきます。
①「地域貢献・地元志向」を志望理由にする場合の例文
まずは、国公立大学などで使いやすい、「地元で働いて地域貢献がしたい」ということを志望動機とする場合の例文です。
「地元で働きたいから」だけでは地元企業や公務員でもよいのではと思われるので、志望大学の特色である起業支援を志望動機に絡めています。
地方からの起業支援ならば地方銀行という選択肢も考えられますので、大学でしかできない教育・研究活動のサポートに魅力を感じたことについて、面接での受け答えでさらに述べるとよいでしょう。
「ご自身で地方から起業するというお考えはありますか?」
「具体的に本学の職員として取り組んでみたいことはありますか?」
②教育・研究への興味を志望理由にする場合の例文
次に、志望大学の特色ある教育や研究に興味を持っていることを志望動機とする場合の例文です。
自分の留学経験を絡めつつ、志望大学で働きたいという思いをずっと持っていたことをアピールしています。
面接での受け答えでは、具体的に自分の英語力を教育・研究の支援においてどのように生かしていくかということを述べるとよいでしょう。
「英語を使ったお仕事をされていたということですが、具体的にどのようなことをされていましたか?」
「本学の英語教育で特に優れている点はどこだと思いますか?」
③建学の理念への共感を志望理由にする場合の例文
最後に、私立大学で使いやすい、建学の理念への共感を志望動機とする場合の例文です。
具体的なエピソードを複数添えて、自分の考え方と建学の理念との一致をアピールしています。
建学の理念への理解が中途半端だと面接でボロが出てしまうので、建学の理念についてはしっかりと理解を深めておきましょう。
「本学の建学の理念はどこで知りましたか?」
「建学の理念を実現するため、あなたが具体的に取り組んでみたいことはありますか?」
2.エントリーシートや面接の志望動機を説得力のあるものにする3つのポイント
ここまで志望動機の例文について解説しましたが、もちろん志望動機は人それぞれで、100人いれば100通りの志望動機があります。
あなたには、あなたにしか書けない志望動機があるはずなのです。
この章では、あなたの志望動機を説得力あるものにする3つのポイントを紹介します。
志望動機を考えるときには、以下の3つのことを意識するようにしましょう。
- PREP法(結論・理由・具体例・再結論)を意識しよう
- 志望動機に自分の経験や得意なことを結びつけよう
- その大学でなければいけない理由を言えるようにしよう
具体的な内容について、解説していきますね。
①PREP法を意識しよう
エントリーシートでも面接でも、志望動機を述べるときはPREP法(プレップ法)を意識して構成を考えましょう。
PREP法とは主にビジネスシーンで用いられる文章構成方法で、
- P=Point(結論)
- R=Reason(理由)
- E=Example(具体例)
- P=Point(結論を繰り返す)
といった具合に、①最初に結論を伝え、②次にその理由を説明、③事例で理由を補強し、④最後に結論を再度提示します。
具体的には、以下の例のようになります。
結論:私は梅干しのおにぎりが好きです。
理由:なぜなら、味がおいしいことに加え、塩分やミネラルを多く含むため、熱中症対策にもなるからです。
具体例:子供のころに行った炎天下のピクニックで、ウインナーやシーチキンのおにぎりは気持ち悪くて食べられなかったのですが、梅干しのおにぎりはそのしょっぱさがとてもおいしく感じ、気分もすっきりしたことを覚えています。
再結論:だから私は、梅干しのおにぎりが好きです。
これは、話の聞き手側の集中力が最も強いのが開始直後の30秒程度であるため、結論を最初に話すことで、あなたの最も伝えたい事柄を強く印象付けることが狙いです。
また、エントリーシートの場合でも、冒頭に結論を持ってくることにより、あなたの伝えたいことを読み手が把握しやすくなります。
もちろんすべての受け答えや文章でPREP法を使用しなければならないわけではありませんが、結論を最初に持ってくることは常日頃から意識しておくとよいでしょう。
②志望動機に自分の経験や得意なことを結びつけよう
いくら素晴らしい志望動機を述べても、そこにあなたの経験や得意なことが結びついていなければ、誰にでも言える志望動機となってしまいます。
志望動機にあなたの経験や得意なことを結びつけることにより、初めてあなただけのオリジナルな志望動機が完成します。
例えば、海外への留学経験がある人が大学で地域貢献をしたい場合は、「得意の語学を生かして留学生と地域住民との橋渡し役になりたい」とするのもよいでしょう。
志望動機を聞かれているときは志望理由だけを聞かれているのではなく、「あなたが大学で何ができるか」ということも見定められています。
あなたの経験や得意なことを志望動機に結びつけることで、あなたが大学職員として活躍する姿を試験官にイメージさせることができます。
③その大学でなければいけない理由を言えるようにしよう
メインの志望動機を「地域貢献」にするにせよ、「教育業界への関心」にするにせよ、その大学でなければいけない理由は必ず述べましょう。
例えば、大学で地域貢献がしたいのならば同じ地域の他の大学でもよいですし、教育業界に関心があるならば教師や塾講師への就職でもよいわけですよね。
大学職員の試験は倍率が高く、仕事内容はどの大学でも大きく変わらないため、受験者が複数の大学を併願することは珍しくありません。
試験官の立場からすると、せっかく内定を出しても他の併願先の大学に就職されてしまったら、元も子もありませんよね。
そのため、大学職員の採用試験では志望度がとても重視されます。
「なぜうちの大学でなければいけないのですか?(あなたのやりたいことはよその大学でもできませんか?)」ということは面接の中でも必ず深掘りされますので、対策は万全にしておきましょう。
3.大学職員の志望動機でよくあるNG例3選
志望動機を説得力あるものにするポイントについて理解できたところで、よくあるNG例についても紹介しておきます。
以下の3つが、大学職員の志望動機でよくあるNG例となります。
- 限られた業務だけを志望している
- 安定やワークライフバランスだけが志望理由
- 地元志向が強すぎる(私立大学の場合)
ひとつずつ詳しく解説していきますね。
①限られた業務だけを志望している
大学職員の仕事の一部だけを見て志望動機にすることはNGです。
大学職員の仕事と言えば、窓口で履修登録を受け付けたり、学生の相談に乗ったりといったような学生支援業務をまずイメージしますよね。
しかし、大学職員の仕事の幅は実はとても広く、学生支援業務は大学職員の仕事のほんの一部でしかありません。
初期配属時に希望が通るとは限らない上、大学職員は2〜3年に一度の間隔で人事異動があります。
大学職員の仕事の一部だけを見て志望動機にしていると、面接官に「この人は自分のやりたい仕事しかしたくないのかな?」と思われるリスクがあることを覚えておいてください。
学生支援の仕事に対する熱意は感じますが、「学生支援以外の仕事をするときはどうなのかな?」と思ってしまいますよね。
具体的にやりたい仕事があるときは、大学の志望動機ではなく「本学で具体的にやりたい仕事はありますか?」「本学でどんなことを実現したいですか?」のような質問に対する答えとして述べるようにしましょう。
②安定やワークライフバランスの良さだけが志望理由
「4.大学職員2000人のリアルな志望理由を分析して国立・公立・私立それぞれの特徴を理解しよう」で解説しますが、「安定しているから」が大学職員の志望理由として当てはまる人の割合は、国立・公立・私立のすべてで1位となっています。
ですが、正直に「安定しているから」だけを志望理由とするのはNGです。
国立大学の場合は大学の基礎的な財源である運営費交付金が年々減らされていたり、公立大学や私立大学の場合は運営費交付金がない分、少子化に対応する策を打ち出していく必要があるなど、今後の大学業界を取り巻く環境は、決して磐石とは言えません。
私が大学職員として働いていて感じたのは、「これまで通りの仕事はきちんとこなしつつも、変革していくべきところは意見を出して変えていく」職員が求められているということです。
文部科学省も2016年より大学職員のSD(スタッフ・ディベロップメント=職員の能力開発)を義務化し、大学改革の重要性を打ち出してきています。
つまり、面接官が少なからずあなたに期待しているのは「大学に新しい風を吹き込むこと」なのです。
そのため、安定していることやワークライフバランスの良さだけを理由とした志望動機では、採用されることは難しいでしょう。
安定していることやワークライフバランスの良さは、「いくつかある志望理由のうちのひとつ」程度に留めておきましょう。
③地元志向が強すぎる(私立大学の場合)
同じく「4.大学職員2000人のリアルな志望理由を分析して国立・公立・私立それぞれの特徴を理解しよう」で解説しますが、「地元で働けるから」を志望理由としている人は多いです。
しかし、特に大手の私立大学の場合、日本全国にキャンパスや系列校、附属学校を設置していることは珍しくありません。
そして、私立大学職員になるということはその学校法人に就職するということなので、ほとんどの場合、複数のキャンパスや系列校、附属学校への異動があります。
例えば、学校法人立命館は、京都府の立命館大学と大分県の立命館アジア太平洋大学の2つの大学を運営しているため、どちらにも勤務する可能性があります。
国立大学職員や公立大学職員を志望する場合は、転勤がないため地元志向を志望動機にしても問題ありません。
しかし、私立大学職員を志望する場合は、勤務地についてよくリサーチしておき、全国転勤がある場合は地元志向をあまり強く打ち出しすぎないようにしましょう。
4.大学職員2000人のリアルな志望理由を分析して国立・公立・私立それぞれの特徴を理解しよう
大学職員のリアルな志望理由は、国立・公立・私立で全く異なることを理解しておくことで、あなたの志望動機を考える上でのヒントが見つかるかもしれません。
この章では、現役の大学職員約2000人のリアルな志望理由を分析し、国立・公立・私立それぞれの大学の特徴について解説していきます。
2021年に東京大学大学経営・政策研究センターが現役の大学職員1,983名に実施した第2回全国大学職員調査によると、大学職員という仕事を選んだ理由について、6つの項目の中で「よくあてはまる」「ある程度そう思う」と答えた人の割合は、国立・公立・私立でそれぞれ以下の表のようになっています。
国立大学 | 公立大学 | 私立大学 | |
学校・教育業界に関心があったから | 83.7% | 69.4% | 87.3% |
自分の専門性や経験を活かせるから | 34.2% | 54.3% | 60.9% |
安定しているから | 97.3% | 89.2% | 87.7% |
地元で働けるから | 70.7% | 79.4% | 66.6% |
勤務先大学のミッションに共感したから | 54.9% | 46.6% | 61.4% |
職場の雰囲気が良いから | 66% | 49% | 67.2% |
「学校・教育業界に関心があったから」及び「安定しているから」は国立・公立・私立のすべてでTOP3に入っている一方で、各項目の数値については国立・公立・私立で大きく異なっていることがわかります。
そこでこの章では、国立・公立・私立大学職員のリアルな志望動機の特徴について、詳しく解説していきます。
4-1. 国立大学職員の志望動機の特徴
「安定しているから」が97.3%とダントツのトップで、「学校・教育業界に関心があったから」83.7%、「地元で働けるから」70.7%と続きます。
国立大学職員は公務員に準じた給与・待遇となっているため公務員試験との併願者が多いことから、「安定しているから」が一位となったことにも納得です。
一方、「自分の専門性や経験を活かせるから」については34.2%と、公立や私立に比べてかなり低い割合となっています。
これは、国立大学職員の採用数の半分以上が、30歳以下という年齢制限のある統一採用試験からの採用であることが関係していると思われます。
国立大学職員として働いている人は、自分に特別な専門性や経験がないと感じているために、安定を求めて大学職員になった人が多いと推測できますね。
4-2. 公立大学職員の志望動機の特徴
公立大学についても「安定しているから」がトップの89.2%で、「地元で働けるから」79.4%、「学校・教育業界に関心があったから」69.4%と続きます。
公立大学職員は基本的に転勤がなく、キャンパスもひとつだけであることが多いので、「地元で働けるから」と答えた人の割合は国立大学よりも高くなっています。
「勤務先大学のミッションに共感したから」や「職場の雰囲気が良いから」はいずれも50%を切るほど低い割合となっています。
公立大学の職員は管轄する自治体からの出向や人事交流によって大学職員となっている人、すなわち自分の意思で大学職員になったわけではない人も多いため、このような結果になっていると考えられます。
4-3. 私立大学職員の志望動機の特徴
私立大学についても「安定しているから」がトップですが、割合は87.7%と国立や公立に比べると低くなっています。
「学校・教育業界に関心があったから」が87.3%、「職場の雰囲気が良いから」が67.2%と続きます。
注目すべきは「自分の専門性や経験を活かせるから」が60.9%、「勤務先大学のミッションに共感したから」が61.4%と、国立や公立に比べてかなり高い割合となっていることです。
自らの専門性や経験、理念への共感を志望動機としている人が多い私立大学は、民間企業に近いようなエントリーシートや面接の対策が求められると言えます。
5.志望動機を考えるときのネタはどう集める?5つの媒体を紹介
ここまで志望動機の具体的な書き方やNG例などを紹介してきましたが、志望動機を考えるときのネタや志望大学の特徴・強みはどこから探せばよいのか、悩んでいる人もいると思います。
そこでこの章では、志望動機を考えるときのネタ集めの媒体を5つ紹介します。
- 受験生向けパンフレット
- 経済系雑誌の大学特集号
- 国立大学の統合報告書
- 各大学の中長期計画
- 大学認証評価
最初に紹介するものほど受験生や一般向けのものであり、最後に紹介するものほど大学のステークホルダーに向けたやや専門的なものになります。
とは言え、本気で志望する大学があるのならば全てに目を通しておく価値はあります。
どのような内容が書いているのかについて、ひとつずつ解説していきますね。
①受験生向けパンフレット
受験生向けパンフレットは大学が受験生にアピールしたい事項が端的にまとめられており、大学の強みや特徴を最も掴みやすい媒体となります。
志望大学についてほとんど何も知らない場合は、まずは受験生向けパンフレットから目を通してみるのがよいでしょう。
ただし、大学は受験者を一人でも増やしたいので、大学が少しでもよく見えるように、表現を誇張したり、大学の良い点ばかりを挙げていることは頭に入れておいてください。
学外からの客観的な評価ではなく、あくまで大学の主観的な評価に基づく媒体であることには注意しましょう。
②経済系雑誌の大学特集号
各経済系雑誌では、1年に1回程度、大学をさまざまな側面からランキング付した特集号が発売されます。
例えば、週刊東洋経済が毎年発行している「本当に強い大学」は、志願者数や就職力といった偏差値からだけでは測れないランキングを掲載しているほか、有名大学の最新動向をまとめていたり、800以上の国公私立大学の決算データをまとめていたりと、受験生だけではなく大学職員志望者にとっても役に立つ雑誌となっています。
このような雑誌は情報量も多くネタ探しにはなりますが、各大学の強みや特徴について深く掘り下げているわけではないことに注意が必要です。
そのため、大学職員になりたいとは思っているけれど、どの大学を志望するべきか迷っている人などにとっては、いろいろな大学の情報をまとめて知ることができるためおすすめです。
③国立大学の統合報告書
「統合報告書」という言葉を聞いたことがない人も多いかもしれません。
統合報告書とは、企業の売上や資産など法的に開示が定められた財務情報に加え、企業統治や社会的責任(CSR)、知的財産などの非財務情報をまとめたものです。
大学の場合は、2018年度に東京大学が作成したことを皮切りに、各地方の国立大学でも制作されるようになりました。
①の学生向けパンフレットとの違いとしては、メインは財務情報であり、それに関連した形で、大学のビジョンや直近の成果が記載されているということです。
受験生向けではなく、大学のステークホルダー、すなわち利害関係者にむけた媒体なので、やや専門的な表現はありますが、大学の財務に詳しくない人でも読めるように、用語の解説なども工夫されています。
やはり財務情報を知っておくと、寄付金が多い、教員一人当たりの受託研究費が多いといったような大学の強みや、反対に弱み・課題といったことを発見しやすくなります。
まだすべての国立大学が作成しているわけではなく、公立や私立では作成している大学はほとんどありませんが、志望大学が統合報告書を作成している場合は、ぜひ一度目を通してみることをおすすめします。
④各大学の中長期計画
各大学が設定している中長期計画では、数年〜数十年先に目指す大学の姿が具体的に説明されています。
そのため、今後の大学の方向性を知るためにはぴったりの資料だと言えます。
国立大学の場合は、6年間をひとつの期間として中期計画を定めることが義務付けられており、各大学の中期計画は文部科学省のホームページや各大学のホームページで確認することができます。
私立大学の場合は、日本私立大学協会の資料によると、平成30年度時点で75%の大学がすでに中長期計画を策定しており、20.1%の大学が策定を検討しています。
私立大学では大学によって中長期計画の期間は異なりますが、例えば関西学院大学だと2039年までの長期ビジョンを策定しています。
中長期計画も受験生に向けた資料ではないため、やや理解しにくいところもあるかもしれません。
しかし、今後の大学の方向性を汲み取った志望動機が書けているかどうかは、合否を大きく左右します。
中長期計画は大学の方向性を示す最も重要な資料となりますので、ぜひ読んでおいた方がよいと言えます。
⑤大学認証評価
大学認証評価制度とは、学校教育法に基づいて、国公私全ての大学、短期大学、高等専門学校に対して、7年以内に1回(専門職大学院は5年以内に1回)、文部科学大臣の認証を受けた評価機関による第三者評価を受けることを義務付けるものです。
あまり一般に知られてはいませんが、大学の信用を担保するための重要な評価制度です。
審査結果はほとんどの場合「適合」となりますが、重要なのは、その大学の課題や改善点について、第三者の視点から指摘していることです。
大学の作成したパンフレットや報告書だと、どうしても大学のことをよく見せようとする意識が働いてしまいますが、大学認証評価は第三者である評価機関が行っているため、課題や改善点について忖度せず、ありのままが指摘されています。
このような指摘は、面接の逆質問を考えるときにも役立ちます。例えば、「直近の大学認証評価では〇〇を努力課題として指摘されていましたが、その後、貴学ではどのように改善に取り組まれているのでしょうか?」といったように逆質問を考えることもできます。
それなりに分量もあるため、この章で挙げた媒体の中では最もとっつきにくいかもしれませんが、大学の課題や改善点を知るためにはこれ以上ない媒体となります。
6.まとめ
あなたの志望動機を説得力あるものにするためのポイントは、以下の3つです。
- PREP法(結論・理由・具体例・再結論)を意識しよう
- 志望動機に自分の経験や得意なことを結びつけよう
- その大学でなければいけない理由を言えるようにしよう
大学職員の志望動機を考えるときには、上記の3つのポイントとあわせて、よくあるNG例についても理解しておきましょう。
- 限られた業務だけを志望している
- 安定やワークライフバランスだけが志望理由
- 地元志向が強すぎる(私立大学の場合)
それでも良い志望動機が思いつかない人は、以下の3つのうちのいずれかを志望動機の軸として考えてみましょう。
- 地域貢献・地元志向
- 教育・研究への興味
- 建学の理念への共感
志望動機を考えるときには、その大学の特徴や強みを知っておく必要がありますよね。
以下のような媒体は志望動機のネタ集めにも役に立つため、参考にしてみましょう。
- 受験生向けパンフレット
- 経済系雑誌の大学特集号
- 国立大学の統合報告書
- 各大学の中長期計画
- 大学認証評価
この記事が、あなたらしい志望動機を考えるために役に立つことができれば、とても嬉しいです。
私が貴学を志望した理由は、自身の出身地で腰を据えて働き、日本を動かすエネルギーを地方の若者から生み出していきたいと思ったからです。
私は長男ということもあり、就職は地元ですると決めていました。国立大学は基本的には転居を伴う転勤はないと説明会で伺ったことがきっかけで、国立大学法人での仕事に興味を持ちました。
また、私は大学では地方創生を研究するゼミに所属しており、研究の中で、近年は地方発・大学発のベンチャー企業がどんどん勢いを増していることを知り、今後の日本の発展を支える鍵は地方のエネルギーだという結論に至りました。
貴学では若手教員や学生の企業を支援する取り組みが盛んで、実際に何億円もの金額を調達したベンチャー企業も生まれていると伺っています。
開拓者精神に溢れた貴学で、教育・研究活動のサポートを通じて、これからの日本を動かすエネルギーを持つ若者を支援していきたいと思い、貴学を志望いたしました。(399字)